CHAPTER 06
KPI 設計の 5 指標 — 会話成功率 / ネガ率 / 残存率 / 商談化率 / 市場 NO シグナル率
2026 年 6 月 19 日 / 橋本 周平
エンプラ BDR で見るべき指標は 5 つに集約されます。商談数や受注数は「結果が確定した過去」を見ているだけで、進行中の市場の状態は捉えられません。本章では、市場の状態を捉える 5 指標を解説します。
5 指標の全体像
エンプラ BDR の月次運用は、次の 5 指標を信号 (緑 / 黄 / 赤) で評価して動かします。指標名と閾値は LOGOTORU OS の画面・既定値と同じです (旧称は括弧内)。
会話成功率 (旧称: 有効会話率)
本人と話せた人数 ÷ 当月アプローチ人数 (手紙の送付先を含む)
🟢 ≥20% / 🟡 10-20% / 🔴 <10%
意味: 本人まで届いているか。本人に断られた会話も「話せた」に入る
ネガ率 (ネガティブ反応率)
拒否を返した人数 ÷ 本人と話せた人数 (「防衛」は含まない)
🟢 <20% / 🟡 20-30% / 🔴 ≥30%
意味: 話せた相手の反応の冷たさ。STOP の条件ではない
残存率 (リスト残存率)
本人NG・異動でない人数 ÷ アクティブ人数 (休眠の人・休眠の会社の人を除く)
🟢 ≥70% / 🟡 50-70% / 🔴 <50%
意味: 当たれる母数の持続性
商談化率
商談データのある人数 ÷ 本人と話せた人数
🟢 ≥20% / 🟡 10-20% / 🔴 <10%
意味: 会話が商談に変わっているか
市場 NO シグナル率 (旧称: ネガパーソン蓄積率)
全期間で拒否を返した人数 ÷ 休眠を除く在籍人数 (未接触も含む)
🟢 <5% / 🟡 5-20% (10% で警戒) / 🔴 ≥20% = STOP
意味: リスト全体に溜まった NO。STOP を決める唯一の指標
健全性スコアは 6 つ目の指標ではなく、5 指標のまとめです。各指標の信号を点数 (緑 3 / 黄 2 / 赤 0) にして合計し、15 点満点で表します。市場 NO シグナル率が 20% 以上の月は 0 点。当月の人数が足りず判定保留になった指標は計算から外し、満点もその分下がります。判定 (続ける / 変える / 一旦退く / 判定保留) の決め方は第 9 章。
FIGURE 6-1
5 指標ダッシュボード — 自社 (サンプル) vs 当社データの中央値
破線は当社 5 テナント 39 ヶ月の中央値 (2026-09 時点、当月アプローチ 30 人以上の月)。バーの色は信号 (緑 / 黄 / 赤)。ネガ率と市場 NO シグナル率は 低い方が良い (逆数指標)。サンプル値: 黄 4 つ (2 点 × 4) + 緑 1 つ (3 点) で健全性 11 点、市場 NO シグナル率も 5% 以上のため判定は「変える」(ADJUST)。
指標は連動する
指標は時間差で連動します:
- ネガ率が先に上がる (= 市場が冷め始めるサイン)
- 会話成功率が遅れて下がる (= 3 ヶ月後、Y = −0.26X + 0.19 の関係式。当社データ n=26、r = −0.69。第 7 章クラスター 参照)
- 市場 NO シグナル率が積み上がる (= リスト全体に NO が溜まる)
- 残存率が落ちる (= 母数枯渇)
- 健全性スコア (5 指標の合計) が下がる (= 経営報告で見える)
経営に報告する時点で問題化していたら、その前にネガ率が上がっていた可能性が高い。週次でネガ率を見るのが最も早い兆候の拾い方です。
中央値 (median) との比較
単独の指標値だけでは判断しにくく、中央値と比較して初めて「自社は上 / 中央値 / 下」が分かります。当社 5 テナント 39 ヶ月の中央値 (2026-09 時点) は 付録 A にまとめています。業種別の傾向は第 8 章。
指標悪化時の改善打ち手
ネガ率が上がった (20% から黄、30% 以上で赤)
- メッセージ刷新 (営業色を抑え、業界事例 + 課題提起の切り口へ)
- セグメントを 1 階層ずらす (部長 = Layer 4 → 課長 = Layer 3 など)
- 月間アプローチ量を 20% 削減
会話成功率が下がった (<10%)
- 連絡先の質確認 (古い番号 / メアド / LinkedIn 期限切れ)
- 電話時間帯の見直し (当社の観測では午前 10〜11 時が最も会話になり、次いで 16 時台。13 時台が最も低い。観測レポート)
- ゲートキーパー対策 (第 3 章クラスター)
残存率が下がった (<50%)
- リスト補充プロジェクト即発注 (1 ヶ月以内に 200-500 名)
- 月間量を月 80 件に抑制
- 新セグメント (隣接業種・隣接役職) を検討
商談化率が下がった (<10%)
- 話せている相手のレイヤーを確認 (決裁から遠い層に偏っていないか)
- 会話の終わり方を確認 (資料送付で終わらず、次の約束まで取れているか)
- 提案の切り口を見直す (商材説明より先に、相手の業界課題の問いを置く)
市場 NO シグナル率が上がった (5% で注意、10% で警戒、20% 以上で STOP)
- 20% 以上なら同セグメントを止める (再開まで 3 ヶ月以上が目安、経験則)
- セグメント変更 + メッセージ刷新を同時実施
- 経営層への撤退提案を月次レポートで上申 (第 9 章)
KPI 観測の運用ルール
- 週次で記録: 月次では遅すぎる (第 10 章クラスター)
- 中央値と並べて見る: 単独の数字だけでは判断しにくい
- 5 指標すべて: 1 指標だけ追うと別の指標悪化を見逃す
- 月次レビューで判定 + 打ち手記録: 第 7 章のアジェンダで定例化